(出典:http://hhinfo.jp/ entry/menstokyo/event/category/smc)
長谷川裕也氏をご存知でしょうか。
同氏は2017年ロンドンで行われた靴磨き世界大会にて初代王者獲得の実績を持ち、南青山骨董通りにある靴磨き専門店「Brift H」代表を務めています。
そんな長谷川氏が著書「自分を変える靴磨きの習慣」の出版を記念して、阪急メンズ東京のスタイルメイキングアカデミーにて、本を教材にしたセミナーを実施するということで参加してきましたので、ご紹介します!
ちなみに本自体は下の「靴磨きの本」の方が売れているとのことでした(笑)
目次
WHY:そもそもなぜ靴を磨く必要があるのか?
慣れていないとめんどくさい靴磨き。そもそも何故磨く必要があるのでしょうか。
「長持ちするから」それも一つの理由でしょうが、他にも理由があります。
相手への敬意を示し、好印象と信頼感を与えることで、対等にビジネスを行う土壌が築けるから。そしてそういった状況を作り出すことで自分自身の意識や行動にポジティブサイクルを生み出すことができるからです。
これは様々な本や実体験からの私の結論ですが、実際、たとえば4代目Berluti(ベルルッティ)当主のオルガ・ベルルッティも「靴を磨きなさい。そして自分を磨きなさい」と語っており、靴磨きと自己研鑽とを重ねています。
Mezzoforte Loungeで「スーツスタイルに関する豆知識」をいくつかご覧の方はご存知かと思いますが、基本的な考え方は、論理的に正しいスーツの選択と同じですね。
ちなみに、今回の長谷川氏のセミナーおよび著書の中でも、「靴を磨いて変わる17のこと」を語っており、帰納的に同様の結論が導き出されていました。
実際に挙げられていた「靴を磨いて変わる17のこと」次の通り。赤字は特に重要とのこと。(重複感があるとは御本人もおっしゃっていました笑)
- 仕事へのモチベーションが上がる
- 足元がいつも気持ちいい
- 好印象になる
- 自信が出る
- 信頼感がアップする
- 相手を「見極める基準」が増える
- 「相棒」が出来る
- 一瞬でポジティブになれる
- 身だしなみが洗練されてくる
- 身の回りが整理整頓される
- 歩き方と姿勢が良くなる
- 余計な出費がなくなる
- 行動的になれる
- 早起きできる。
- 「なから作業」で作業が有効に使える
- 考える時間ができる
- 運を引き寄せる
長谷川氏が相対する方々の中には「靴が汚い人とはビジネスしない」という方も少なくないとのことです。最も身近で最も汚れやすいものを綺麗にできないことによって、自己管理能力疑われてしまうということです。
スーツの着こなしと同じで「そんな程度のことで・・・」と思われるかもしれませんが、せっかく仕事ができるのに土俵にも立たせてもらえないというのは、勿体無いですよね。
また、前述の通り靴やスーツが清潔にしっかりと着れていると、自分の意識や行動にも好影響を与えます。
イメージしやすいかと思いますが、気持ちいいんですよね、シンプルに。
他人および自身への影響を加味するとやはり靴磨きはスーツの着こなしと共にパフォーマンスへの重要なファクターとなりそうです。
WHAT:靴磨きとは結局何をするのか
靴磨きは、人間でいうとスキンケアや化粧のようなものです。
人間もまずは汚れを落とし、保湿する。その上で化粧を載せてキレイにしますよね。
いわゆる靴磨きのステップも基本的には同じです。
(①靴磨きとスキンケア)
日々溜まった汚れを落とし、革にとっての栄養である油分と水分を与え、ワックスを塗り磨き上げます。
人間にとってのスキンケア・化粧とイメージすると大枠で押さえやすいかと思います。
とはいえ、スキンケアのように毎日やらなきゃいけないことではないのでご安心を!笑 (帰宅時にサッとブラシで汚れを落とす程度は毎回やっておくとベター)
靴磨き頻度の目安としては「8〜10回履いたら1回磨く」ぐらいが良いそうです。
一ヶ月のうち営業日はだいたい20日程度。そのため靴を2足持っていて代わる代わる履く場合には、1ヶ月で10回程度履くことになります。
よく靴は3足は持って、ローテーションすべきと言いますが、その場合でもやはり1ヶ月で6〜7回は履くことになります。
10回という回数を数えても良いですが、漠と「月一ペース」ぐらいに押さえておくと習慣化しやすいと思います。
ちなみに年間を通してそう履かない靴などは半年に一回程度磨いてあげると良いとのことでした。
やはり時間が空いてしまうと、履いていなくても革が乾燥してしまうんですね。
同じ理屈で、新品の靴を購入した際には、履き下ろす前に磨いた方が良いそうです。
特に海外で作られたものは、工場で仕上げのクリームを塗られてから日本に輸入され、自分が履くその日までに結構な時間が経っているということですね。
しっかりと磨いておくと、革がやわらかくなるため、履きジワもきれいに入るそうで、新品の状態で購入後そのまま靴磨き屋に持っていく方も少なくないそう。(特に靴にとっての初磨きは難易度が高くなる為、1回目のみプロに出してしまうのも靴磨き屋の使い方の一つだそうです。)
HOW:いざ、靴磨き!
さて、メインテーマである靴磨きの方法です。今回のセミナーではシューケア(汚れ落とし~革への影響補給)およびシューシャイン(鏡面磨き)を実際に見せて頂きながら、実践しました。
(図②靴磨きの大きな流れ)
ちなみに長谷川氏が紹介されていた磨き方は突飛なものではなく、一般的にYoutube等で紹介されているものと基本線では同じでした。
準備する道具
セミナー内では、下記の7つ道具を用いて磨きました。
当日は基本的にBrift Hのものが用意されていましたので、WebStoreで購入できますので、リンクも貼っておきますね。
①汚れ落とし
②栄養補給
③鏡面磨き
長谷川氏曰く、ミンクオイルのようにロウ分や油分が多いミンクオイル等を長く使用していると、ベトベトして逆に艶が無くなるとのことです。
良いクリームを塗るべきという考えから、Brift Hでは化粧品会社に依頼し、肌にも塗れるような成分だけで作っているそうです。
とはいえ、Brift Hのものを絶対に使わなければならないわけでもないので、amazonでも購入できるようなラインでオススメなのは
阪急百貨店等でもメインの棚で並べられており、乳化性クリームも伸びがよく初心者でも塗りやすい為、人気があります。
「形から入るタイプ」という方はココまでしっかり揃えてみても良いかもしれません。背水の陣でバッチリ習慣化できそうですね(笑)
汚れ落とし(シューケア)
(図③靴磨きの大きな流れ -汚れ落とし)
さてまずは靴の汚れ落としからです。
丁寧に行う場合には靴紐を外しましょう!(外羽根の場合は紐をすべて外し、内羽根の場合は一番つま先側だけ残して紐を外す)。時間がない場合や億劫になる場合は、紐を外さなくてもOKです。
習慣化せずにボロボロの靴を履きつぶすことの方が問題。
次に馬毛ブラシで靴についたホコリを落としましょう。
隙間もしっかりとブラッシングすることを忘れずに!
ブラッシングのコツとして、手は一定の場所を行ったり来たりさせるのみにし、靴自体の向きを変えることで満遍なくブラッシングすることが挙げられていました。
こうすることで手を疲れさせずに済むそうです。
次に綿の布を指に巻き付けてから、クリーナーを500円台取って拭いていきましょう!
つま先から拭きがちですが、それだとどこまで拭いたかが分からなくなってしまう為、
- 足の外側のかかと
- 足の外側の側面〜外側のつま先
- 内側のつま先〜足の内側の側面
- 足の内側のかかと
の順で拭いてくと良いというのが長谷川氏のアドバイスでした!
クリーナーは汚れを取る効果だけでなく、クリームを浸透しやすくする効果もあるので、しっかりと行いましょう!
風呂上りすぐにクリーム塗ると肌に浸透していくのと同じですね。
ちなみに、鏡面となる部分はそこまでクリーナーをかけていかなくても良いとのことでした。
毎度ワックスを落として、1から磨きなおすのは革に負担がかるようです。
もちろん、汚れている場合は、しっかりクリーナーをかけても問題ありません。
靴全体の表面についた汚れ、古いクリームやワックスが取れると艶が消えて靴全体が白っぽくなりますが、これで完了です!
栄養補給(シューケア)
(図④靴磨きの大きな流れ -栄養補給)
さて、汚れを落としたら栄養補給です。まずは指でほんの少し乳化性クリームを取り、直に塗っていきます。
1回に取るのは飽くまで少量。伸びなくなったら、クリームを足すという形式がオススメです。
例の如くつま先からやっていくと、どこまで終えたか分からなくなる為、外側のかかとから順にやりましょう!
特にヴァンプ(足の甲部)の履きジワには柔軟性を持たせたいので、マッサージするように塗り込むように!
しっかりと中に染み込むように2~3回塗ると良いとのことです。
紐を通す穴等にクリームがついて気になるかもしれませんが、ブラッシング過程でキレイになりますので、気にせずに塗っていきましょう。
次に豚毛ブラシでクリームを馴染ませます。
塗ったクリームをより革の中に浸透させる為、力いっぱい ブラッシングします。
シワはシワにそってブラッシングしましょう。
次に綿の布での乾拭きです。
クリームは革の中にだけ入れば良く、表面に残ってもベタベタするだけですので、しっかり拭き取りましょう。
・・・ここまでがシューケアです。ちなみに5年ほど続けているとシューケアだけでもツヤツヤの革に育ちます!
③鏡面磨き(シューシャイン)
(図⑤靴磨きの大きな流れ -栄養補給)
さて、水とワックスによる鏡面磨きです。
「革が呼吸できないから」と嫌がる方もいるそうですが、長谷川氏曰く「つま先とかかとについては呼吸しなくて良く、むしろワックスでコーティングしておく方が傷から守ってくれる。」とのことです。
まずは指でワックスを塗っていきます。
飽くまでもつま先とかかとの芯が入っているところに塗るようにしましょう。
また、側面のソールとアッパーの境目あたりにも塗り、つま先からかかとまで、輝きが繋がるようにしてあげるのがコツとのことでした。
雨の日にも水を弾いてくれるという効果もあるそう。
次にネル生地を指に巻いてワックスを上塗りしていきます。
・・・が、このネル生地の巻き方が難しく。
とてもわかりやすい写真が挙がっていた為、ご紹介します。
(出典:http://care.happyvalue.com/ blog/2017/02/01/134)
どうしても難しい場合は、ピンと張った状態に保つことを意識してください。
磨く際の布がよれていると鏡面に筋が入ってしまいます。
さてネル生地をピンと張れたところで、水を1適ずつ計5適ほど布に垂らし、寿司を握るように手に叩き込みます。
その後、ワックスを少しつけて、靴のつま先やかかと、側面の境目に上塗りしていきます。
小さな円を描くように、且つATMのボタンを押す程度の力で磨くのがポイントとのことです!(力をいれ過ぎると革の表面のワックスがとれてしまうので、重ねるイメージ。)
このあとは同じ要領でワックスを塗り、水滴を1適だけ靴に乗せ磨く。またワックスを塗る。磨くを繰り返していきます。
初心者やその靴にとっての初磨きの場合は20周が目安とのことです。
ある程度光が出てから、最後は5適ほどの水を乗せて水だけで磨き上げます。
この際、これまでのように円を描くのではなく、直線的に研ぐように磨くことを意識してください!
満足いく輝きになれば、完成です!!!
Brift Hのご紹介
ホテルや空港、駅前でお年寄りが座って磨いている、そんな靴磨きのイメージを覆すのが、Brift Hです。
スーツを着た若い店員がバーのようなカウンターで立って磨くとのこと。
路上だと10分で安く仕上がるところを、敢えて1時間かけて¥4,000という高価格帯でブランディングしつつ、確かな品質を届けています。
ちなみに今回セミナー講師を務めていた長谷川氏に靴磨きを依頼する場合、指名料が乗り、¥6,000でのオーダーとなるそうです。
ちなみに店舗は
〒107-0062 東京都港区南青山6-3-11 PAN南青山204
〒107-0062 東京都港区南青山5-10-5第1九曜ビル101
〒060-0062 札幌市中央区南2条西5丁目31 TERRACE2-5 1F
スーツ同様、靴は案外印象を左右します。人によってはスーツはてんでダメなのに靴はしっかり見るという場合すらあるぐらいです。
何も高級靴を揃える必要はありませんが、しっかりと磨くことや着脱時に靴べらを使う等の注意を払う等の積み重ねが大きな差になります!
今後も革靴やスーツについてご紹介していきますので、是非Feedlyの登録やTwitterのフォローも宜しくお願いします!