(出典:https://www.tailor-fukuoka.com/blog/fabric/2019/)
5月頃からクールビズが始まる会社も多く、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務も増える昨今、ノーネクタイ・ノージャケットも普通になりましたね。夏用のスーツ・ジャケットのオーダーには、嗜好品的な意味合いが強くなっているように思います。
それであれば、もういっそ嗜好品に振り切ってみようということで、リネンの代表とも言えるブランド「SPENCE BRYSON(スペンスブライソン)」のジャケットをオーダーしてみることに。
ちょうど何件がご要望いただいていたテーラーフクオカで、キレイな生地を見つけたので、前回は試していなかった高級仕立て「プレステージライン」の方でお願いしてみました!
今回の仕様はカジュアルですので、ビジネスシーンでの利用は基本的にオススメできません。飽くまでテーラーフクオカのプレステージラインの仕立ての良さはどうよ?という観点で見ていただければと思います。
テーラーフクオカが取り扱うオーダーの全容については、地味な立ち位置も、隠れた高コスパ店!仕様と価格から見たテーラーフクオカでのオーダースーツ考察をご覧ください。
目次
オーダー内容
ざっとまとめると・・・
こんな感じでオーダーしました。
気になる価格は、¥ 54,000!
今回、選択した生地ブランド「スペンスブライソン」は、目付のしっかりしたアイリッシュリネンとして有名で、かなりのカタさと重さがあります。
タイトルの問いに先に答えてしまいますが、一般的なリネン素材と違い全く涼しくはありません(笑)もう完全に嗜好品です。
だからこそ、夏用ジャケットとして着るには、いかに軽い仕立てにするかが重要。モデルはテーラーフクオカで最も軽さのある「ボウ」を選択しました。
仕上がったジャケットのご紹介!
まずは恒例のブランドの証明。
前述の通り重く、メートルあたり400g以上はあるであろう生地です。
シワになりやすく、むしろそのシワが味だと言われるリネンですが、ここまでガッシリすると、5~6回着てようやく肘や腕にちゃんとシワが出てきたなという程度です。
正面から見るとこんな感じです。
ボウモデルの特徴ですが、やっぱりボタン位置高めですね。鏡で見るだけだとそこまで気になりませんでしたが、写真の撮るとハッキリ感じます。個人的にはもう少し低めの方が好きかも。
とはいえ、やはり発色がキレイ!!
ボタンを開けて着ることがメインになるでしょうが、実際開けてみるとボタン位置の高さも気になりません。
さて、横から見るとこんな感じです。
生地のカタさもあって背中がキレイなS字を描いていますね。肩はうっすらマニカカミーチャ、袖の長さはリネンの縮みを考慮して少し長めに設定しました。
生地のカタさ故に肩パッドや裄綿等極力省いているものの、出来上がり直後は、やや腕の可動に難を感じました(笑)
この辺やはり仕立ての良さの限界か?と思いきや2~3回着ると少しずつ、肩が当たっている感覚も薄れ、気持ちよく着れるようになってきました。
次に後ろから見るとこんな感じです。
腰をグッと絞っているのがよく分かりますね。一方リネンということもあり、背にはやや余裕も持っています。
まだ影響が出ていないものの、そのうちリネンの特徴によりベントの裾が内側に巻いてくるそうです。
さて、もう少し細かいところを見ていきましょう。
夏用に着たいことと、生地の耐久性への信頼を踏まえ、背の仕様は珍しく半裏にしています。
ちなみに半裏とは、こういうヤツです
(出典:https://www.tailor-fukuoka.com/blog/columns/2017/)
背抜きよりも裏地の面積が小さく、物理的に軽くなっています。
ご覧の通り、生地がむき出しになっています。
散々カタいだの重いだの言ってますが、一応春夏生地。生地から透けて向こうが見えますね。
襟は二枚襟です。これはテーラーフクオカの場合、前述のオーセンモデルを選ばない限り、避けられません。
使っている工場的に、悪いものを作っているわけではないですが、ここは基本二枚襟で仕上げてきます。そしてスペンスブライソンの襟を殺すのはやはり厳しかったよう。元々生地がかなり重いこともあり、首の吸い付きも相俟ってダイレクトに重さを感じました。
次にボタンですが、今回はビジネススーツではないので、少しいつもとは変えてみることに。
ガッシリしたリネンながらも、出来る限りリゾート的な雰囲気にしたかったので、白の高瀬貝ボタンを選びました。キレイですね~!
「気持ちだけでも涼しく!」という、風鈴のような存在です(笑)
オーダー時のポイントとテーラーフクオカの位置付け
さて、テーラーフクオカのプレステージラインのオーダー時のポイントをお話します!
まず、良いスーツとして押さえるべき重要なポイントは①フィッティング、②生地、③仕立ての3つです。
①フィッティングについては、採寸と調整幅に分けられます。
テーラーフクオカ採寸は、ゼルビーノ同様丁寧な印象でした。店舗数も無駄に拡大していないので、全国チェーン系と違い、店舗間のレベル差も小さいかと思います。
②生地については、現物が並べてあるので、自分で手に取って選ぶことも可能ですし、フィッターの方にイメージをお伝えすれば、適切なものを持ってきて頂けます。
③の仕立てについても詳細に見ていきましょう。
型紙はイージーオーダーですので、既に用意された型紙がベースになります。しかも前述の通り、縫製工場の既定の型紙が大半なのが少し残念なところ。
唯一テーラーフクオカ独自の型紙を用いたオーセンには、襟も含めこだわりを感じますが、スーツ然としたシルエットのため、夏用の軽めなジャケット向きではありませんでした。
また、英国調を謳うチャールズモデルも二枚襟な上に、副資材もしっかりしているため、重みを感じます。この重みを好む方もいらっしゃるかと思いますが、日本人の体格的にもソフトテーラリングの方が好まれる場合が多いので、あまりオススメはできません。特に今回のような重い生地をしてしまうと、着ていて疲れてしまう方も少なくないでしょう。
いずれのモデルについても、腕の可動に関しては正直、型紙アップデート後のゼルビーノのカスタムライン方が優れているように感じました。同じ会社が運営していますが、使っている工場は異なりますし、当然着心地にも違いは出てきます。
・・・というわけで、テーラーフクオカのプレステージラインの特徴をまとめると、
かなと思います。
テーラーフクオカのプレステージラインはどんな人向き?
テーラーフクオカで特にプレステージラインでのオーダーに向いているのは、
かなと思います。
ただし、同じ会社が運営するゼルビーノのカスタムラインの方が価格もやや抑えられ、個人的には着心地も良いように感じます。
ラペルのデザインが南イタリア的なため、そこが気になる方は仕方ありませんが、そうでなければ、一度ゼルビーノで試着してみてから考えても良いでしょう。
裏話的な面白い発見
スーツの内ポケットについている商品表示を見ていたら、あら不思議。フルオーダーを謳う銀座SAKAEYAのマシンオーダーも同じものがついていました。
検品者の名前も同じなので、同じ工場を使っているのではないかと・・・。
「本物」のゼニアを再現とは?銀座SAKAEYAでのオーダースーツの仕様と考察でも触れましたが、やはりこちらをフルオーダーと呼ぶのは厳しそうです。
オーダーの分類の詳細は、仮縫いの有無は無関係!もう騙されないパターン/イージー/フルオーダーの分類をご覧ください。
今後も、実際に私が袖を通した結果や、仕立てた結果、そして店員と話した経験などを、感覚論に終始せず論理と組み合わせて整理していきますので、少しでも興味を持っていただけたら、是非Feedlyの登録やTwitterのフォロー、noteの応援を宜しくお願いします!