(出典:THE SAPEUR コンゴで出会った世界一おしゃれなジェントルマン オークラ出版)
近年注目を浴びる「サプール」をご存知でしょうか。
世界最貧国の1つと言われるコンゴで年収の4割を海外ブランド服に費やすお洒落な集団、それがサプールです。
テレビやネットニュースでも取り上げられ、百貨店としても大丸がサプールの写真展を開催していた為、既にご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
今回はロシアのドキュメンタリーチャンネルRT documentaryの動画を元に、サプールの実態に迫ると共に、日本のビジネスパーソンの装いとの関わりについて触れていきたいと思います。
目次
サプールとは
改めてですが、サプール(Sapeur)とはコンゴにおいてLa SAPEというファッションに身を包む人々のことを指します。
SAPEはSociété des ambianceurs et des personnes élégantesというフランス語の略で、英語だとthe society of ambianceurs and elegant people、日本語だと「お洒落で優雅な紳士協会」を意味します。
コンゴにおいて、カラフルな海外高級ブランドのスーツに身を包み、町を闊歩するお洒落な集団です。
高級ブランドを着ているなんて、コンゴで荒稼ぎした成金なのか?というと、そういうわけではありません。
彼らは他のコンゴの人々と同様、日々貧しい暮らしの中にあり、日々貯金を続けしたお金で洋服を購入しているようです。
サプールの起源と進化
フランス占領時の1920年代に、フランス軍に従事していたラリ族のアンドレ・マツワ氏がフランスからの帰国時にパリジャンのファッションを持ち込み、ダンディな装いを始めたことが起源とされています。
こうして取り入れたフランスの文化とアフリカの感性が交じわり、装いに関する独自に進化したのが今のLa SAPEであり、サプールが守るルールです。
そのルールの1つにはカラーがあります。
カラフルで派手な印象のサプールですが、実は三色以内でのコーディネートが原則です。
その他にも非暴力に徹すること等がルールにあり、内戦の歴史からの教訓が垣間見えます。
サプールとして装いにかける思い
2010年にベスト・サプール・イン・コンゴに選ばれたMaxime Pivot氏は、「着こなしに調和を与え、雰囲気を創出するために、サプールは、一張羅ではなくいくつもの服を持たなきゃいけない。」といいます。
「サプールとして、人々に知られた存在として、また、自分自身の尊厳や自己評価のためにこの靴を買ったんだ」と話す同氏のJean Marc Westonsの靴は、貯金の積み重ねで手に入れた代物でした。
なんと購入するまでに2年かかったそうです。
ここまで時間をかけてでも、サプールは本物にこだわり、フェイクは着ません。
着ている姿を見れば、すぐさま本物を見抜く”通”がいるからだそうです。
そういった環境にあってか、「いかに服がスタイリッシュか、そしてその価格が重要なんだ」と断言するサプールもいるほどです。
また、すべてのサプールから最高位の存在として知られるSeverin Muengo氏も、サプールとして生きることで、どこへ行っても誰もが自分の名前を呼ぶ為、「自分が最も裕福な人間であるかのように感じる」といいます。
サプールは、国民にとってヒーローのような存在なのです。
一方でサプールの捉えられ方に警鐘も・・・
一般的にポジティブな文脈でのみ取り上げられがちなサプールですが、前述のMaxime Pivot氏はサプールの捉えられ方や思想に警鐘を鳴らしてもいます。
「現在のサプールは、そのファッションと生き方故に自身の人生を犠牲にしている。」
同氏は宝くじに当選した知り合いや、父から会社を受け継いだサプールの兄を例に挙げ、物質的欲求を追い求めても、何も得ることができないのだと語気を強めます。
そこで、同氏は学校を設立。色使いの原則を教えつつ、色の組み合わせが価格以上に重要であると説きます。
固定化されつつあるサプールのイメージに憧れる若者たちに「La SAPEは高価な装いと同義ではない」という同氏の思いは届くのでしょうか。
日本のビジネスパーソンの装いとの関わり
サプールはお洒落という文脈で語られることが多く、トレンドを作るファッション関係者から賞賛と注目を集めています。
たとえば、Paul Smithのデザイナー、Paul Smith氏はサプールにインスパイアされたコレクションを展開するほどです。
Sapeurs, Gentlemen of Congo, inspired a Paul Smith collection and a Solange music video. Africa Rising. pic.twitter.com/zFVzhkpeQj
— RHEST (@_RHEST) 2015年3月26日
総論
では、日本のビジネスパーソンも彼らに倣って存分にお洒落を楽しみましょう!
・・・そういうことなのでしょうか。
たしかに私服の時はそれでも良いかもしれません。
しかし、ビジネスにはビジネスの装いがありますよね。
事実、ビジネスシーンを想定した着こなしをメインに取り扱うMezzoforte Loungeで提唱しているルールと異なる点がいくつかあります。
たとえば、え、まだセンスに頼ってるの?論理で再現できるスーツの着こなしで紹介した「落ち着いた色・柄になっていること」という考えからすると、サプールのカラフルさは完全にNGです。
また、うんちく不要!販売員の知識を「運用」したスーツ購入法とは?で紹介した「スーツにかけるお金は年収の3%」とサプールの「ファッションにかけるお金は年収の40%」は当然大きく異なります。
こうやって書くとなんだか、つまらなくなってしまいますが、一般的なビジネスパーソンとサプールではスーツを着ている目的が異なるから仕方ありません。
ビジネスパーソンがスーツを着るのは、相手への敬意を示すためです。
自身のお洒落のためではありません。
一方、サプールがスーツを着るのは平和の希求やコミュニティへの還元という高尚な背景があるものの、お洒落のためです。
お洒落のためのお洒落という事もできるかもしれません。
また、センスに自信がある方はともかく、自信のない方にとって、お洒落という文脈でのスーツは非常に難解です。
トレンドは移り変わる上に論理的に解を出すことも困難になります。
その意味で、比較的明確にルールがあることは大半のビジネスパーソンにとってはメリットだとすら言えるでしょう。
サプールからの学び
しかし、それでも「スーツを愛し、欲しいスーツのために努力すること」は非常に大きな学びかと思います。
仕事帰りにも寄れる!大丸東京店でのスーツ・シャツ購入攻略法でも触れましたが、「いつか着たいスーツ」のように具体的な目標があると、マインドセットが変わってくる為、本当にそのスーツを購入できる自分へと導いてくれます。
この記事を読んでいる方の多くも、ただカッコよくスーツを着ることが目的なのではなく、その延長線上には昇進やビジネスの成功等、実現したい像があるはずです。
そこに辿り着く手段として「いつか着たいスーツ」に思いを馳せてみては!?
最後に
そうは言ってもやはりサプールの着こなしはカッコ良いです。
個人的にも写真集を購入してみました。p2とp92が個人的にはお気に入りです!
kindleで300円程度、というかkindle unlimitedであれば無料なので、興味本位程度でも購入してみる価値アリかと思います。
私個人としては「インドに行ったら人生変わった」のような薄っぺらいことを言うのはニガテなのですが、そんな私でもコンゴに行ってサプールに会ってみたくなる一冊でした。
お洒落という観点で取り上げられるサプールを敢えてビジネスの文脈で捉え直した為、不快に感じる方もいたかもしれません。
しかし、「自分がなぜスーツを着ているのか」は忘れないでください。
仕事も服装も目的志向が重要です。
そして目的達成の手段としてスーツが果たす役割は小さくありません。
たかが服装、たかが印象かもしれません。
しかし、その「たかが」の積み重ねがあなたの今後を大きく左右するかもしれません。