(出典:https://www.do-1.co.jp/)
だいぶお待たせしましたが、今回は、以前Twitterでアンケートをとった際に、最も需要のあった1万円以内オーダーシャツについてです。
ちなみに、ワイシャツのオーダーだと、どのくらいの価格帯に需要がありますか?
チャレンジのハードルが高い高価格帯の方がいいのかなと思いつつも、あまりにも高いと「シャツにそこまで出せない!」となりますよね。(正直私もです。)— Mezzoforte Lounge (@mezzoforte_l) May 22, 2020
後述しますが、いろいろ悩みがありながらのご紹介になります。
目次
シャツオーダーは割と工場が被っている
オーダーしたお店やシャツをお見せする前に、まず押さえておくべきは、シャツはテーラー間で工場の被りが多いということ。
たしかにスーツの工場も被っていることはありますが、シャツの場合はより顕著になるように思います。
今回ご紹介する「DO-1 SEWING(ドゥ・ワン・ソーイング)」は、まさにそれ。
工場側で、襟型やオプション等をまとめた冊子を作成し、テーラー側に提供する等、テーラー支援体制がしっかりしていることもあり、仕上がりの品質も良いことから、採用しているテーラーが多くあります。
東京都だけでも、麻布テーラー、Zerbino(ゼルビーノ)、ファイブワン、Sato Tailor、Tagli arte(タリアート)、WORLD’S BESPOKE、Igarashi Trousers(五十嵐トラウザーズ)、テイジンメンズショップ、BEAUCHAMP PLACE、sartoria mare、Blue O・cean、サルトクレイス、ReL(リエル)、レ・アッカ、バロンズ、JOVAN、IIYA MEN、メンズショップ カワムラ、ザ・ワールド・テーラーズ1919、dandyism wife、KAWASHIMA、北原洋服店、洋服の玉屋、フクダ 本店、株式会社三服屋・・・等が採用しています。
なかなか驚きの数ですね(笑)都内である程度知名度のあるお店でも被りがあるのが面白いです。ちなみにこれは、ドゥ・ワン・ソーイングの公式ページで開示されている情報なので、過激な暴露!とかではありません(笑)
ちなみに基本的にどこのテーラーでも、ベーシック国産生地¥8,500~、リンクルフリー¥11,000~、インポート生地¥16,000~という価格設定になっているかと思います。白無地100番双糸コットン100%でも¥10,000ジャスト。ポリエステル混紡は¥8,500でオーダー可能です。
ビジネスシャツの良し悪しの考え方
ドゥ・ワン・ソーイングのシャツについて語る前に、前提としてビジネスシャツの良し悪しの考え方について整理しますね。
先に言っておきますが、ここから述べるのは、飽くまで個人的な良し悪しの判断軸です。
デザインが好き、ブランドストーリーが好き、店員が好き、環境に配慮している、縫いがキレイ・・・いろいろあっていいと思っています。それをご理解いただいた上で、続きをご覧ください。
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いつも通り、ビジネスユースを想定し、「着心地」を判断軸におきます。
リモートワークでシャツを着ないことが増えた方も多いでしょうが、だからこそ「着心地」が悪いものだと、いざ着用しなければならない時に余計に大きなストレスになるでしょう。
逆に日々シャツを着用する方は、いわずもがなですね。激務クラスタは特にでしょうが、精神的ストレスの大きな仕事をする中、服から無駄に身体的ストレスまで受ける必要はないでしょう。
では、何が着心地を左右するのか?ですが、「サイズ」と「生地」の2つです。シャツはスーツ以上に肌により近いため、これらの影響をモロに感じます。
シャツは、洗濯してしまうので、スーツのように「縫製時のアイロンワーク」がポイントになるわけではありません。
スーツで重要だった「型紙」についてはどうでしょう。試しに¥9,000台から¥40,000以上まで様々にオーダーして、自分専用の型紙も引いてもらいましたが、正直私を含む一般人には変化を感じづらいかと思います。
そうすると結局、身体の動きを妨げづらくする要素、つまり「サイズ」と「生地」の良さに落ち着くわけです。
サイズと生地の考え方
やはりサイズは偉大。量販店レベルからパターンオーダーに変えた瞬間は、スーツ以上に感動します。
しかし、そこから先はイージーオーダー、フルオーダーとレベルを上げても、驚くような変化はあまりなくなるように思います。
雑に図示するとこんな感じです。
量販店でもバッチリ自分のサイズの人であれば、もう少し違うかもしれませんが、そんな方ほぼ存在しないので、基本的には大きく逸れていないはず。
これは逆に、オーダーをしていても、急激に太ったりしてサイズが合わなくなると、如実に着心地が悪くなることも意味しています。コロナ前後の私ですね(笑)
一方、生地については、サイズ程ではないものの変化は感じます。たとえば、同じ工場のオーダーでも、安い単糸コットン生地と、糸の細いの高級コットン生地で比較すると、肌触りに明確な違いがあり、着心地にもやや変化を感じました。
生地での変化が小さいとはいえ、ポリエステル混紡は基本的には、オススメしません。素材の性質として、吸湿性がないので、夏とか蒸れて気持ち悪いですよ・・・。
で、ドゥ・ワン・ソーイングは、どうなの?
さて、本題です。
前述の通り、最重要ポイントはサイズです。そしてそれは、パターンオーダーでも十分に変化が感じられます。大半の方は、どこの工場のシャツでもある程度満足できるでしょう。
その上で、敢えてドゥ・ワン・ソーイングの魅力について語りますが、一言でいうと、価格に対する品質の良さでしょう。
生地ラインナップ的にも、1万円程度で収まる、もしくは高級生地でも2万円以内で済むにも関わらず、縫い方や釦の付け方に工夫が凝らされています。
まずは、縫い方について。シャツを裏返すと、脇や横っ腹にあたる部分に縫い目があると思います。ドゥ・ワン・ソーイングでは、ここを「巻き伏せ本縫い」という縫い方で作っています。同じ価格帯でも百貨店とかの物だと、インターロック縫いというもっと低コストな仕上げになっている場合があります。
巻き伏せ本縫いのメリットですが、まず縫い目がキレイです。そして、一般的には、縫い目がどう処理されているかで、素肌に触れた時の感じ方が違うと言われます。
とはいえ、縫い目のキレイさは、気にしない方も多いでしょうし、素肌に触れた際の感覚の違いも、正直私はあまりよくわかりません。実際にテーラーの方でも感じづらいようです。
それでもこの巻き伏せ本縫いを魅力として語っているのは、耐久性が高まるから。インターロック縫いだと、着ていて少しやわく感じます。同じ価格なら耐久性高く作ってくれる方が嬉しいですよね!
次に襟の芯材について。この価格帯だと低コスト化のために接着芯を用いるケースが多いですが、フラシ芯を採用しています。フラシ芯だと、アイロンがけの際、襟のシワの処理が若干面倒になる気がしますが、首回りにゴワつきが出なくなるため、着心地も若干高まります。
ちなみにイタリアの高級既製品ブランドでは、出張等の際、ホテルが外注する先のアイロン技術が未熟でも襟をキレイにアイロンがけできるよう、敢えて接着芯にするんだとか。めちゃくちゃ手先不器用な私でも、そんなに酷いアイロンがけにならないので、フラシ芯で問題あるのか疑問が残りますが・・・。
次にカフス(袖口)のボタンの付け方について。ドゥ・ワン・ソーイングでは、「根巻き留め」という、根本を長めにとってくれています。
比較対象として、ビッグヴィジョンやファブリックトウキョウが利用する工場「オリテック」の袖ボタンを並べました。
ボタンの根本の糸の部分が少し長くなってるのが分かりますよね?このおかげで、袖ボタンが付けやすくなっています。
またカフスの形についての工夫があります。まぁここは好みでもあるのですが、円錐型になっているため、手首へのフィット感が心地よく感じます。
魅力を敢えて挙げるならば、この辺りでしょうか。
同じ工場を採用しているテーラーならどこでオーダーしても同じか?
実は違います。
たとえば麻布テーラーは、スプリットヨークという仕様とガゼットというパーツを標準仕様にしているため、少し価格が高く設定されています。
ちなみに私自身ドゥ・ワン・ソーイングでスプリットヨークの有無両方試してみましたが、特に着心地に変化はないです。縫製技術の低い昔には効果的だったそうですが、現代の縫製技術ではこの仕様に自己満足以上の意味はないように感じています。
そしてガゼット。シャツの裾あたりで前身と後身を繋ぎ合わせるところにつけるパーツを指すのですが、こちらも現代ではデザイン以上の意味はないパーツです。高級カミチェリア(シャツ工房)やシャツブランドの意匠として付けるなら良いと思いますが、正直この価格帯でわざわざオプション料金を払ってまでつけるものではないでしょう。
これらを踏まえると、基本的に麻布テーラーで、オーダーするのは基本的に勿体無いように思います。
一方、Sato Tailorの場合は、麻布テーラーのようなオプションが勝手に乗せられていることもないですし、四半期に一回程度、オプション3種無料セールや価格割引のセール等を開催しています。
個人的には、どうせオプションをつけるなら貝ボタン等の方が、見た目の高級感に大きく影響するので、Sato Tailorでオーダーする方がいいように考えています。
その点、普段スーツでよくオススメするゼルビーノについては、特に無駄なオプションが乗っていないものの、Sato Tailorのようなセールもありません。ドゥ・ワン・ソーイング工場によるオーダーについては、Sato Tailorの方がお得なのは確かでしょう。
所感
多くのテーラーで工場が被っているのは、驚きました。1万円以内そして1万円台シャツとしては、同工場の採用が一つの解のようにも感じています。
今回は、工場の紹介に留め、実際にオーダーしたシャツについては別記事で改めて紹介します!
一方、散々スーツで推してきたゼルビーノへは、ちょっとガッカリ感もありました。スーツであれだけこだわっているのに、シャツは他のテーラーと同じかよ!と(笑)
・・・が、これで終わらないのが、あのお店の好きなところ。このままじゃ面白くないと、ナポリスタイルオーダーという別工場でのオーダーも開始して、こちらの方がやや安い上にクオリティも個人的に非常に素晴らしく感じます。こちらも改めて紹介記事を書きますね。
今後も、実際に私が袖を通した結果や、仕立てた結果、そして店員と話した経験などを、感覚論に終始せず論理と組み合わせて整理していきますので、少しでも興味を持っていただけたら、是非Feedlyの登録やTwitterのフォロー、noteの応援を宜しくお願いします!