(出典:https://www.hanabishi-housei.co.jp/brand/)
長く縫製屋としての下請け仕事が多かった老舗のHANABISHI。たしかな縫製技術を基に独自で始めたオーダースーツが、近年注目を集めています。
・・・が、老舗の縫製工場というだけで本当に仕立ても素晴らしいのでしょうか?着心地の良いスーツになるのでしょうか?
今回はそんな疑問を解消すべく、HANABISHIでのスーツのオーダーを徹底解剖し、解説したいと思います。
まずはオーダーできる内容のおさらいをしますが、仕様や評価を知りたい方は、HANABISHIのスーツの仕様から読み始めて頂いても良いかと思います。
目次
オーダーの分類は「イージーオーダー」
HANABISHIはマシンメイドで、CADに登録されたベースとなる型紙から縦・横幅調整し、あなた用の型紙を作成する「イージーオーダー」を採用しています。・・・というか、このイージーオーダーは花菱が開発したとされています。
ゲージ服というサンプルとして用意されてた服を着て、採寸結果に合わせて調整していきます。また、なで肩や猫背などの方向けの体型補正も行われます。
パターンオーダー、イージーオーダー、フルオーダーの違いや詳細が気になる方は、仮縫いの有無は無関係!もう騙されないパターン/イージー/フルオーダーの分類にまとめましたので、是非ご覧ください。
HANABISHIのハウスモデル紹介
HANABISHIでは大きく3つのハウスモデルが用意されており、ブリティッシュ、イタリアン、インターナショナルの中から選ぶことができます。
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その名の通り、英国をベースとした直線的なシルエットであり、広い肩幅や高い位置でのウエストシェイプが特徴です。ボタン位置、腰ポケット位置、ラペル幅、肩幅、袖幅、着丈など自由にカスタマイズ可能です。
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その名の通り、イタリアンをベースとした曲線的なゆったりとしたシルエットであり、身体を包み込むような柔らかい着心地が特徴です。HANABISHIの80年に渡るオーダースーツの仕立て経験とと技術が注ぎ込まれた1着です。
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ヨーロピアンをベースとしたソフトスーツタイプのゆったりとしたシルエットであり、広い肩幅、ゆるやかなウエストライン、太い袖、低いゴージラインなどが特徴です。サイズや体型補正などのきめ細かさはフルオーダー並みとなっています。
どのモデルを選ぶかによって、カスタマイズできる箇所が微妙に異なります。
たとえばラペルについてHANABISHIではピークドラペル、セミピークドラペル、ノッチドラペル、セミノッチドラペルという選択肢がありますが、セミピークドラペルが選択できるのはイタリアンのみです。
基本的にはこの他の違いはないとのことでしたが、実際にオーダーする際にはご自身の好みと照らし合わせ、店員とご相談の上で決めるべきかと思います。
各モデルの写真付きでの詳細は、公式サイトをご覧ください。
HANABISHIで選べる生地と価格
それでは生地についてです。生地は反物ベースおよびバンチブックベースで選ぶことができ、その生地に応じて仕上がりの値段が異なります。
選べる生地ブランドの一部とその値段をご紹介しますね。
- HANABISHI ORIGINAL ¥39,000〜
- ENTITY ¥59,000〜
- X-FACT ¥59,000〜
- ANGELICO ¥69,000〜
- COLCHIS ¥69,000〜
- JOHN GREENISH ¥69,000〜
- ABRAHAM MOON ¥69,000〜
- DUAL PROTECT ¥69,000〜
- 橋本毛織 ¥69,000〜
- CANONICO ¥79,000〜
- REDA ¥79,000〜
- daidoh limited ¥79,000〜
- TRABALDO TOGNA ¥79,000〜
- DRAGO ¥89,000〜
- 御幸毛織 ¥89,000〜
- CERRUTI ¥100,000〜
- TALLIA DI DELFINO ¥100,000〜
- Tollegno ¥100,000〜
- DORMEUIL ¥120,000〜
- Ermenegildo Zegna ¥130,000〜
- Loro Piana ¥130,000〜
HANABISHIのカスタマイズ概要
さて、生地を選んだらデザインです。袖ボタンは並びつけ、重ねつけは勿論、本切羽もオプション料金+¥2,000で対応頂けます。
ポケットは、ノーマル、スラントだけでなくチェンジポケットもオプション料金無しで対応頂けます。
ベントはセンターベント、サイドベンツ、ノーベントから選ぶことができ、裏地も総裏、背抜きどちらも選択できます。
納期は3週間〜1ヶ月前後とのことです。
また、スリーピースやツーパンツ等にした場合の価格は生地によって異なります。
若干ややこしいので、公式サイトの表を抜粋しました。
(出典:https://www.hanabishi-housei.co.jp/items/price/)
HANABISHIのスーツの仕様
オーダースーツはサイジング命で、見た目的にはサイズが合っていればカッコよくは見えます。
が、着ている本人の着心地はサイズとは別に、スーツの仕立てられ方、仕様に影響を受けます。具体的には襟付けと袖付けの仕様がスーツの着心地を左右します。
襟付けはしっかりとアイロンワークを施して生地を首の形合わせて捻じ曲げることで、ジャケットを着た際の体圧を分散し、疲れにくく仕立てた「一枚襟」と、そういった作業をスキップして簡易的に立体感を作り出す「二枚襟」という仕様があります。
HANABISHIでは二枚襟を採用しているので、首への吸い付きのレベルは高くはありません。店舗規模や価格的にここまで求めるのは酷なので、仕方ないでしょう。
袖付けについては、肩の付き方やいせ量などが重要。前身頃に対して後身頃側の生地を多めに使い、それらをいせ込んで縫い合わせることで、可動域を担保しているわけですが、見るより着てみるのが一番。
しっかりした仕立てのジャケットを着たことがある方が着れば分かると思いますが、HANABISHIの仕立てレベルは標準程度で、袖の可動域の部分で嬉しい驚きを感じることはありません。
HANABISHIにしようかまだ悩んでいる方であれば、ぜひ一度ご覧ください。
「俺評価。」は?
HANABISHIはハウスモデル間での仕様に変化がないので、すべて同様の評価です。
過去に縫製工場として花菱縫製を利用していた一流テーラーで、今は他工場に変更している所もあり、花菱縫製では一流が求める水準(俺評価。 でいう着心地「高」)まで着心地を昇華することが困難だということも分かります。
評価方法の詳細については9割の人はテーラー選択ミス?「俺評価。」はじめましたをご覧ください!
一部ですが、同様の価格でより優れたテーラーは確実に存在しますし、実際に予算3〜6万でOK!最高のオーダージャケットが見つかる銀座の黄金ルートで、友人をあちこちのお店へ連れ回した際にも、HANABISHIへの食いつきは正直、良くありませんでした。
「着心地」というのは、プロでなくとも分かります。特に本当に圧倒的に着心地が良いものは、上記の記事で登場する私の友人のような一般サラリーマンでも違いに気付きます。
そして、一旦そういったスーツを試着すると、やはり仕立てのレベルが高くないテーラーのスーツに驚いてしまうわけなんですね。
とはいえ、残念ながらまだ当サイトは全国をカバーできているわけではなく、地方在住の方により良いテーラーを必ずしも紹介できているわけではありません。そしてHANABISHIも決して悪い物を作っているわけではなく、極めて一般的な水準のスーツを仕立てています。
地方にお住まいで、これだ!というテーラーがないのであれば、全然オススメできるテーラーだと言えるでしょう。老舗ということもあり縫製が丁寧なのは間違いありません。
ただし、基本的には「初心者向けのテーラー」という理解で良いかとお思います。
ここまで見て、本当にHANABISHIだけ見て決めていいのか?という方は、体型の悩みをバッチリ補正!東京のイージーオーダースーツ店まとめ等で他店舗も検討してみると良いかもしれません。
関東を中心に全国各地にあるHANABISHI
HANABISHIは関東を中心に全国各地に店舗を構えています。
札幌店 / 北大通り店 / 盛岡店 / 山形店 /仙台店 / 新潟店 / 新前橋店 / 岩槻加倉店 / 千葉店 / 東京店 / 銀座店 / 新橋店 / 池袋店 / 渋谷店 / 自由が丘店 / 八王子店 / 横浜 関内店 / 横浜 馬車道店 / 静岡店
オーダーに向けた事前準備
こちらはオプショナルですが、一流のビジネスパーソンとして、適切にスーツを着こなすための情報を以下にまとめましたので、ぜひご覧ください!
そもそも論理的に一流のスーツスタイルとは・・・
え、まだセンスに頼ってるの?論理で再現できるスーツの着こなし
身体に合ったスーツとは・・・
あなたはなぜ残念なスーツを購入してしまうのか?一流を作るスーツとは
差がつくポイントは・・・
なぜあの人はカッコいいのか?差がつくスーツ・ジャケットのポイント
生地を選ぶ際のポイントや特徴は・・・
素材・柄からイギリス・イタリア生地まで!スーツ生地の特徴と違い
パンツの裾上げの対処法は・・・
知らないのに結局聞かれる…パンツの仕上げの種類と対処法
販売員と上手くやり取りを行う方法は・・・
うんちく不要!販売員の知識を「運用」したスーツ購入法とは?
スーツの着こなす上で最低限押さえるべきことは・・・
意外と知らない?スーツを着る上での基本
今後も、実際に私が袖を通した結果や、仕立てた結果、そして店員と話した経験などを、感覚論に終始せず論理と組み合わせて整理していきます。
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