(出典:https://www.global-style.jp/)
積極的なネット広告等でオーダースーツ初心者からも高い知名度を誇るグローバルスタイル。
2着で¥●●という広告により心的ハードルも低く、お手頃にオーダースーツを楽しむことができることから、人気テーラーとなっています。
実際、【レビュー】グローバルスタイルでSUITSのハーヴィー系スーツをオーダーしてみた感想でご紹介した通り、私もオーダーした経験がありますしね!
さて、これまでMezzoforte Loungeを運営する中で、都内だけでも50以上のテーラー、ブランドを見て、ご紹介してきましたが、そういった経験を通した今、グローバルスタイルはどう位置づけられるべきなのか?をお話したいと思います。
目次
まずは誤解のないように。「コンビ価格」と「常時開催フェア」
グローバルスタイルの特徴として、最初に押さえておくべきは「コンビ価格」と「常時開催フェア」です。
広告でも「2着で~」と書かれているように、広告に表示されている価格は飽くまで2着購入時の1着あたりの価格であって、1着のみ購入の時には割と値段が上がることは認識しておきましょう。
基本的には生地のブランドごとに価格がついており、オプションとなるような仕様変更をしない限りは以下の価格で仕立てることが可能です。(括弧内がコンビ価格)
- ANGELICO ¥58,000〜 (¥39,000〜)
- Tollegno ¥58,000〜 (¥39,000〜)
- ORMEZZANO ¥68,000~ (¥44,000〜)
- CANONICO ¥68,000~ (¥44,000〜)
- REDA ¥68,000~ (¥44,000〜)
- DRAGO ¥68,000~ (¥44,000〜)
- TRABALDO TOGNA ¥68,000~ (¥44,000〜)
- JOHN FOSTER ¥68,000~ (¥44,000〜)
- EMPIRE MILLS ¥68,000~ (¥44,000〜)
- LASSIERE MILLS ¥68,000~ (¥44,000〜)
- GLOBAL TRAVEL(オリジナルブランド) ¥68,000~ (¥44,000〜)
- BIELLESI ¥78,000~ (¥49,000〜)
- LUIGI COLOMBO ¥78,000~ (¥49,000〜)
- TAYLOR & LODGE ¥98,000~ (¥58,000〜)
- WAIN SHIELL ¥98,000~ (¥58,000〜)
- TALLIA DI DELFINO ¥98,000~ (¥58,000〜)
- CARLO BARBERA ¥98,000~ (¥58,000〜)
- ARISTON ¥98,000~ (¥58,000〜)
- Savile Clifford ¥98,000~ (¥54,000〜)
- CERRUTI ¥98,000~ (¥54,000〜)
- DORMEUIL ¥108,000~ (¥68,000〜)
- SCABAL ¥108,000~ (68,000〜)
- FOX BROTHERS ¥108,000~ (¥68,000〜)
- Ermenegildo Zegna ¥108,000~ (¥68,000〜)
- Loro Piana ¥108,000~ (¥68,000〜)
- HOLLAND&SHERRY ¥168,000~(¥109,000〜)
コンビ価格はたしかにお手頃なのですが、1着ずつ購入する場合はそうでもないように感じますね。この感想は絶対額に対する感覚論ではなく、ちゃんと理由があります。
オーダースーツの価格を決定する要素は、大きく分けると「生地代」と「仕立て代」の2つがあります。
生地代は当然ブランドごとに仕入価格が異なるので、高級ブランドになれば上がりますよね?これはイメージが付きやすいかと思います。
さらに、生地を仕入れる際に、反物ベースで仕入れる場合と、バンチブックベースで仕入れる場合があり、前者の場合にはまとめて購入し自社在庫としている分、安く抑えられます。
後者についてはバンチブックから生地サンプルを選び、そのたびに発注・輸送としているため、テーラー側は在庫リスクを低減できますが、その分、オーダーする側の消費者は少し高めの価格を払う必要が出てきます。
そこでですね。グローバルスタイルについてですが、母体が生地屋ということもあり、反物で生地を揃えているわけです。
でも価格はというと、バンチブックベースで揃えているお店、たとえば麻布テーラーなどと比べても決して安い価格になっていないわけです。
「え、それって生地代じゃなくて仕立て代にお金がかかってるからじゃないの?いい仕立てをしてくれるなら高くなるに決まってんじゃん!」
そうなんです。おっしゃる通り、いい仕立てをしてくれるなら高くなるのには納得できます。
が、グローバルスタイルは他のテーラーと比べた際に、特段仕立てのレベルの高いテーラーではありません。
オプションとして2万円上乗せした際には国内の工場を使っていることが公表されているものの、標準の工場については公表されていません。
もちろん、アジアなどの海外工場で生産している=低品質というわけではありませんが、実際に仕立ててみた感想としても、不満があるレベルではないものの決して高水準の技術力のある工場が仕立てたスーツではありません。
以上2つの観点から見ても、企業側がかけているコストに対してお手頃だとは言えないのではないかと考えています。同じ反物で生地を仕入れているチェーン店系のテーラーでいえば、ビッグヴィジョンの方がよっぽど安く仕立てることができる上に国内縫製なんですよね。。。
次に、「常時開催フェア」についてです。
広告では期間限定フェアを掲げているのものの、正直このフェアは名前が微妙に変わるだけで、ほとんど常時開催しているんですよね・・・
ちなみに、これは期間別に各テーラーのセール情報を追っていた結果の気付きです。
2018年11月~12月
2019年1月~3月
2019年4月~6月
現在進行形のセールについては【セール情報】東京のオーダースーツ店のセール情報まとめをご覧ください。
まぁグローバルスタイルに限らずずっと閉店セールしているお店とかもあったりするので、この商法自体に全く不満はありませんが、期間限定だと勘違いして特に比較検討もせず「オーダーしなきゃ!」と急ぐのは避けた方が良いかと思います。
「パターンオーダー」の幅と仕様
グローバルスタイルはマシンメイドで、既定の型紙の縦幅調整のみが基本となる「パターンオーダー」を採用しています。
用意されたゲージサンプルの中から基本的な形を選び、あとは採寸結果に合わせて微調整をしていきます。グローバルスタイルでは、カッチリした印象のものからやわらかい印象のものまで幅広く複数ハウスモデルがあるため、いずれかのモデルのゲージ服から調整することになります。
+¥20,000のモデル
初めてのオーダースーツの方の嗜好を広くカバーできるようになっていますので、グローバルスタイルでオーダーしたい!と心に決めた場合には、選択肢を多く持つことができ、良いかと思います。
もちろん、パターンオーダーなので補正できる範囲には限界がありますし、殊にグローバルスタイルにおいては細かい補正ができるわけではありません。
仮縫いの有無は無関係!もう騙されないパターン/イージー/フルオーダーの分類でもご紹介した通り、パターンオーダーは、イージーオーダーと比べ、補正できる箇所が少ないのは事実です。
しかし、パターンオーダーの中にも、補正できる箇所やカスタマイズの幅には違いがあり、グローバルスタイルのそれは比較的変更余地は少なめとなっています。
これは採寸などを行うフィッターにアルバイトなどを活用していることを考えても、当然かなと思っております。というのも適切な経験を積み、フィッターとしてのレベルが高くなければ体型に合わせた補正を行うというのは不可能だからです。
実際、一流のビスポークテーラーの方から言わせれば、「自分で型紙を引いたり、縫ったりできなければ、採寸結果から補正が最終的なスーツの仕上がりに与える影響がイメージできない。そんな人間の補正などパフォーマンスに過ぎない」とのことでした。
まぁこれは正直、求めるレベルが高すぎる気がしますが、それにしてもアルバイトに任せるのはちょっと心もとないぐらいに難しい作業であることは事実です。
この言葉を基に、改めてグローバルスタイルについて考えてみると、細かい補正が行えないのは当然でしょう。
もちろん、最初に用意されている型紙がバッチリ自分の体系に合えば全く問題なく、サイズの合ったスーツを手に入れることはできます。あとは確率の問題ですね。
ただし、忘れてはいけないのが、サイズが合うこと = 着心地が良い事 ではない、ということです。
これは意外かもしれませんね。
サイズが合っているというのは、飽くまで採寸結果から妥当なサイズに落とし込めているという状態です。
しかし、着心地の良いスーツ(ここでは特にジャケット)を仕立てる上では「人間の身体に動きに合った袖や肩周りの作り」や「首に吸い付くような入念なアイロンワークによる襟付け」、「柔らかい副資材の使用」が必須になります。
しかし、グローバルスタイルに関して言うと、いずれについても甘いと言わざるを得ません。
適当なことを言っていると思われないように敢えて触れますが、肩についてはアームホールも決して小さいわけでなく、肩のいせ量も多いわけではないので、肩にひっかかる感覚がどうしてもあります。(もちろん、体型によって多少の感覚の違いはありますが、可動域に関してグローバルスタイルで「感動できる」方はさすがにいないかと思います。)
襟については標準モデルでも+2万円のモデルであっても、すべて二枚襟で仕立てられいます。
二枚襟という形にすることで、入念なアイロンワークを施すことなく簡易的に立体感を出すことができるのですが、首への吸い付きが甘くなるので、体圧が分散せず長時間着ているとどうしても疲れるジャケットになってしまいます。
副資材についても、自分の身体に合った柔らかい毛芯が使われていることで着心地の良さと耐久性を実現できるのですが、グローバルスタイルのそれはそこまでには至っていません。
・・・厳しいことを書きましたが、正直、「着心地の良いスーツ」を目指すことは、この価格帯のテーラーにはほとんど不可能といって差し支えありません。
というのも前述の通り価格を決める要素となる「仕立て代」を押さえようとすると技術力の高い工場とは提携できないからです。
幸か不幸か、仕立てのレベルの高いスーツを着たことがなければ、着心地の良さというものに気づくこともありませんし、グローバルスタイルのスーツでも満足できると思います。(実際私もそうでしたよ!)
でも、ちゃんといいものも知ってみたい!しかもグローバルスタイルと同じような価格で!という方は、Zerbinoを訪ねてみるのが良いのではないかと考えています。
一番お手頃なCustom Lineであれば値段はそう変わらない上に、仕立ての良さはグッと高まります。(いかり肩の方や、前肩がひどい方はCustom Lineでは型紙が合わない可能性もありますが、試す価値はあるかと。予算に余裕があるなら+4万円でLuxury Lineにすれば、そんな体型も問題なく、柔らかい極上のスーツが手に入ります)
それでもグローバルスタイルなら!カスタマイズ概要もご紹介
さて、いろいろと書きましたが、最終的な選択は個人の自由です。
自分の家からアクセスできるテーラーがグローバルスタイルしかないという方もいるかと思いますし、グローバルスタイルが大好きだ!とい方もいるでしょう。
なので、ここからは単純な情報ベースでカスタマイズ概要について、いくつか取り上げてご紹介します。
袖ボタンは並びつけ、重ねつけが標準で選択可能で、本切羽もオプション料金+¥2,000で対応頂けます。
ポケットについても、ノーマル、スラントが標準で選択可能で、チェンジポケットもオプション料金+¥2,000で対応頂けます。
ベントはセンターベント、サイドベンツ、ノーベントから裏地も総裏、背抜きどちらも標準で選択できます。
また、スリーピース好きな方は生地の35%の価格でベストを作ることができます。生地を高級にすればする程、ベストの価格も上がる為、お財布との相談になりそうですね。
ちなみに納期は4〜5週間程度とのことです。
・・・ここまで見て、本当にグローバルスタイルだけ見て決めていいのか?という方もいるのではないでしょうか。
テーラーというのはどうしても入店に心的ハードルがあるため、複数店舗を歩き回って比較するのは精神的にしんどい場合があります。
いざ、店舗に入ってしまうと、「やっぱり止めた」と言いづらいのも事実です。
そこでパターンオーダーおよびイージーオーダーのお店でオーダーできる内容を以下にまとめておきました!
あれ、知らなかった!?東京でパターンオーダーできるお店まとめ
体型の悩みをバッチリ補正!東京のイージーオーダースーツ店まとめ
しっかり机上で比較検討した上で、足を運んでみてください!
「俺評価。」 結論、グローバルスタイルの位置づけは?
通常のハウスモデルでも、+¥20,000のミケランジェロモデルやカイザーモデルでも着心地は大して変わらず、評価は同様です。
評価方法の詳細については9割の人はテーラー選択ミス?「俺評価。」はじめましたをご覧ください!
納得いかない!という方は、「身体に合う」の嘘。フルオーダー信仰が崩壊し、既製品最強が生まれる理由も併せてご覧いただくと良いかと思います。
情報の広く手に入る時代です。当サイト(Mezzoforte Lounge)でも都内の大半のテーラーをご紹介しています。
その気になれば、よりお手頃な価格でオーダーできるテーラーも、同価格でずっと高水準のスーツを仕立ててくれるテーラーも見つけれられるんです。そのひと手間さえさけるのであれば、違う選択肢が見えてくるのではないかというのが正直な感想です。
ただし、グローバルスタイルはオーダー経験のない人でも入店しやすさがありながらも、オシャレな雰囲気も両立しています。初のオーダーであれば大半の方は満足できると思います!私自身特に不満はありませんでした。
基本的には「初心者向けのテーラー」でしょう。
オーダーに向けた事前準備
こちらはオプショナルですが、一流のビジネスパーソンとして、適切にスーツを着こなすための情報を以下にまとめましたので、ぜひご覧ください!
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え、まだセンスに頼ってるの?論理で再現できるスーツの着こなし
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今後も、実際に私が袖を通した結果や、仕立てた結果、そして店員と話した経験などを、感覚論に終始せず論理と組み合わせて整理していきます。
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