【レビュー】サヨナラ実用性。Bespokemanでソラーロスーツをオーダーしてみた感想


(出典:https://www.lanieri.com/blog/en/the-solaro-suit-tale-of-a-myth/)
前回、激推し英国系テーラー!Bespokeman(ビスポークマン)でのオーダースーツ仕様と考察にて、同店が取り扱うオーダーの全容とその素晴らしさを語りましたが、「結局、お前はどんなスーツになったんだ」というところかと思います。

私もついに、ソラーロ生地でスーツをオーダーしてみましたので、生地の魅力も踏まえながら、ビスポークマンでオーダーした場合の特徴をご案内していきます!

目次

タイトルにもあるソラーロって何?

まずはソラーロの説明ですが、ビジネスシーンでは全く使えない趣味ベースの生地の話なので、Bespokemanの作りだけ知りたい方は、飛ばしてもらって構いません!

それでは、改めまして。ソラーロは一言で説明すると「英国由来の玉虫色の生地」のことです。

英国だけでなく、ドイツ、フランス、ポルトガル、ベルギー、アメリカ等は熱帯地域への進出時に、白色人種が現地の気候に適応できず、健康上の問題を抱えることを課題視。解決策を模索しました。

コットンが良い、ウールが良い等紆余曲折ありながらも、20世紀初頭、英国の軍人が植民地でUVから肌を守ることができるよう開発されたのが、このソラーロです。

当時から白のように薄い色の方が、熱を保たないことは分かっていたものの、軍人が着る色として白が適さず、カーキが採用されたようです。

【参考】European Cloth and “Tropical” Skin: Clothing Material and British Ideas of Health and Hygiene in Tropical Climates

また、こういった歴史とは別に、現代では洒落者のスーツというイメージが強くなっています。日本人でもDittosの水落卓宏氏や、ユナイテッドアローズの鴨志田康人氏が好んで着ていますね。

私も弱小ブログとはいえ、スーツに関して書き続けているのに、ソラーロを持っていない、着たことがないのはどうなのか?と考え、オーダーすることに決めました!(クライアントとの打ち合わせがある際には絶対に着ません。)

さらに、前述の歴史的背景も踏まえ、どうせお願いするなら英国系のテーラー・・・そう、それでBespokeman(ビスポークマン)なわけです。

オーダー内容

前置きが長くなりましたが、誂えたスーツをざっとまとめると・・・

  • モデル:Made to Measure English Cut
  • 基本形:3つボタン段返り
  • 生地:ウィリアム・ハルステッド
  • ラペル:ノッチド 9cm
  • ポケット:水平フラップポケット
  • ベント:サイドベンツ
  • 袖ボタン:4つボタン
  • 裏地:総裏

こんな感じでオーダーしました。

気になる価格は、¥ 138,000!金子氏自身の手作業が入っていることを踏まえると、非常に良心的な価格です。

メゾフォルテラウンジ(Mezzoforte Lounge)をよくご覧いただいてる方だと、もしかしたら、あなたにゼニアは不要です。本当にいい生地の考察と選択ガイドで、「ソラーロといえばスミスウーレンズ」って言ってただろ!!とツッコミが入りそうですが(笑)

ただし、同記事にはブランド名で選ぶべきではないとも書いているので、別に間違ったことはしていません!笑

スミスウーレンズも勿論検討はしたのですが、開発当時のオリジナルを残していることもあり、生地がガッシリし過ぎているんです。日本の春夏に着るには、あまりにも暑すぎるので断念。

これは、ビジネススーツを選ぶ時にも言えることですが、ちゃんと着用シーンを考えた生地選択をしましょう。

大人数を前に講演等を行う時には、光沢感・高級感がある方が良いかもしれませんし、日常業務で着るには、ある程度目付のしっかりした生地が適しているかもしれません。このように着用シーンに合わせなければ、無用の長物になりかねません。

たとえば、営業企画部の若手が、日々光沢感バリバリのゼニアのスーツを着て、営業部長もくる内部定例等に出席するシーンを想像してみてください。

ただでさえ、営企と営業部は、あまり上手くいっていないケースが多いのに、そんな若手のスーツは悪目立ちする可能性があります。

「たかが服で・・・」と思うかもしれませんが、実際、人は細かい理由等考えず、なんとなくで印象を受け、その『なんとなく』が感情や判断に影響を及ぼすケースが多くあります。

たかが服だからこそ、そんなものでマイナスは避けましょう。

・・・話が逸れました。すみません(笑)

オーダー過程

普段は書いていないのですが、ビスポークマンはやや特殊なオーダースタイルなので、過程もお見せしますね。

こちらも、激推し英国系テーラー!Bespokeman(ビスポークマン)でのオーダースーツ仕様と考察で触れましたが、

初回来店:オーダーしたいもののイメージを伝え、生地決めと採寸
2回目来店(約1ヵ月後):工場から仕上がってきたものをフィッティング。金子氏の手直し
3回目来店(約1週間後):再度フィッティングフィッティング。納品or再度手直し

というステップになっています。

初回来店時には、生地を選んだ後に採寸ですが、ゲージは一切使いません。これは金子氏がビスポーク対応可能だからこそ安心して任せられるところですね。さすがにそうでないとサイズゲージを着れない状態でオーダーするのは不安で仕方ありません。

ちなみに採寸時には、肩の傾斜?前肩具合?を確かめるための、下記写真の定規(?)を当てられました。初めての体験。

(出典:https://www.instagram.com/bespokeman_/)
細かいことですが、「肩の作りをどうするか?」は、このタイミングでも聞かれるものの、飽くまで工場が仕上げてくる形を決めるのみです。2回目以降に金子氏が仕上げを行うため、ナチュラルショルダーでもロープドショルダーでも、どちらを指定しても問題ありません。

約1ヵ月後の2回目来店時には、工場から仕上がってきたスーツのフィッティングです。

基本的には工場で作られていますが、肩パッドについては、私の前肩に合わせて、端を薄く、胸側に行くに連れて厚くなるよう金子氏のハンドメイドとなっています。

ただし正直、この時点での着心地は、「俺評価。」でいう所の「中」程度。私は典型的な前肩ですので、肩部分がおもいっきりパッドに当たっている感覚があり、今回みたく柔らかい生地でないと、ややストレスがかかるかな、といったところでした。

利用している工場のいせ量が物凄い場合には、この時点で肩にも当たらないので、メゾフォルテラウンジで普段からよく挙げているゼルビーノのLuxury Lineレベルのスーツが工場生産時点で仕上がるわけではないです。

正直に感覚をお伝えした上で、たとえばゼルビーノの新Custome Lineの型紙みたく、アームホールが肩の前方にグッと食い込んだ形にできないか?と相談。これならLuxury Line程のいせ量が無くともあるいは・・・と思いましたが、見事快諾!


金子氏がご自身で修正するため、腕の付け根から胸あたりにチョークを入れていました。

また、トラウザーズについても、私は左脚の脹脛が張っているため、生地が脚に引っかかって、クリースラインが外側に流れていってしまうんですね。そこも金子氏自身で修正点として提案してくださいました。

さらに、背中のツキジワ。私がほぼ常に抱えてるオーダー時の課題でもあるのですが、今回もがっつりと出てしまいました。

これ、ずっと私の猫背が原因だと思っていたのですが、肩甲骨周りが出っ張っており、首の真下の菱形筋あたりとの段差が激しいことで発生しているようです。初めて原因を明確に指摘されてだいぶ気持ちがスッキリしました!

対応方法として当該箇所に、台芯を挿れて段差が生じづらくするとのこと。ビスポークでの手法とのことです。(こちらゼルビーノでも顧客の体型に応じて実は行っていることが後日明らかになり、違う驚きもありました笑)

さて、そこからさらに約1週間後、3回目の来店です。

肩パッドはさらに手作業で修正いただき、肩はグッと内側へ。袖も私の腕の付き方に合わせて付け直していただきました!


クリースサインもストンと落ち、インプリーツがめちゃくちゃキレイです。


横から見てもキレイな袖に!!

帰宅後の全方位写真

まずは恒例のブランドの証明。

見づらいかもしれませんが、内ポケットの裏側にブランドタグが貼られています。基本的には付けないそうですが、希望があれば、こちらに付けるとのこと。

すみません、私はこんなブログを書いていることもあって、付けてもらいました・・・。

生地自体は、330g程だったので、スミスウーレンズと比べ遥かに軽く柔らかいです。明るい色なので、シワが見えやすい生地ですので、一切のシワも許せないような方は、絶対に着てはいけません。


私としては非常に珍しく赤ネクタイ。ニットタイ×サックスブルーのシャツや、デニムシャツと合わせても良さそうですね。

袖山はビジネスシーンで着るわけでもないことからナチュラルにしていますが、通常のネイビー生地で誂える際には、ビルドアップにしても英国らしくて良いかもしれません。

PC作業時に窮屈にならぬよう、絞りを入れすぎないようにしつつも背中のS字はラインはキレイに出ていますね。二の腕当たりに出ているシワは、スーツのものというより、下に着ているシャツが浮き上がっているだけです。明るい色だと、こういうのも見えてしまいやすいですね。

背中のツキジワもだいぶ緩和されています。腰の絞りも提案されたものより緩くしたものの、アワーグラス型のシルエットのおかげでだいぶウエストが締まって言えますね。まさに体型をよく見せるスーツ!


改めてクリースラインを比較してみました。左からビスポークマン、ゼルビーノLuxury Line、テーラーフクオカ プレステージライン、ビッグヴィジョン、グローバルスタイルです。

たしかに、ビスポークマンとゼルビーノLuxury Lineは真っすぐとキレイなラインになっています。テーラーフクオカは左脹脛の引っ掛かりが出ています。ビッグヴィジョンやグローバルスタイルは、引っ掛かっている上にクリースラインもだいぶ外側に引っ張られていますね。

さて、もう少し細かいところを見ていきましょう。

襟は一枚襟で仕上がってきます。

パンツについては、持ち出しの部分がホックになっています。

これまでボタン留めのケースが多かったのですが、サヴィルロウではホックが通常とのことで、せっかくならとホックにしてみました。ボタン留めではないので、持ち出しにボタン用の穴も開いていません。

そして珍しく尾錠もつけてみました!調節用途というよりこれは装飾的な意味合いの方が強いです。基本的にアップチャージになるので、普段私は付けないですが、ビスポークマンでは無料でしたので、付けることに。やはりクラシカルにはなります。

というかこの写真、玉虫色なのが分かりやすいですね!本当にキレイな生地です。

オーダー時のポイントとビスポークマンの位置付け

さて、ビスポークマンのメイド・トゥ・メジャーのオーダー時のポイントをお話します!

まず、良いスーツとして押さえるべき重要なポイントは①フィッティング、②生地、③仕立ての3つです。


それぞれについて、もう少し詳細に見ていきますね。

①フィッティングについては、採寸と調整幅に分けられます。

ビスポークマンの採寸は、前述の定規を当てられたり等、これまで細かく見られていなかった点もチェックされました。他のお店と比べ少しキツめにメジャーで測られたのも印象的でした。

採寸精度については、金子氏に対応いただけるので心配ありませんし、なんなら2回目以降のフィッティングのタイミングで詳細確認できます。

②生地については、バンチブックが基本となります。現物が並べてあるわけではなく、柄々しい生地を選ぶ際には注意が必要です。

とはいえ、取り扱っているのが英国生地ブランドのバンチブックですので、落ち着いた暗めの生地が多いので、そこまで気にする点でもないでしょう。

英国ものばかり揃っているため、派手な柄や光沢の強い生地を求める方には全く向いておらず、本当にクラシカルなスーツ・ジャケットを好む上級者向きです。

③の仕立てについても詳細に見ていきましょう。

パターンオーダーですので、型紙は既に用意されたものがベースになります。

ビスポークマンで利用している型紙は、よくある工場側で用意したものではなく、金子氏自身が作成しています。英国本場のスーツをお手頃に体感できる、この型紙こそが特長と言えるでしょう。

基本の縫製は、一定以上の価格のスーツで触れる必要はないとして、着心地向上の技術に関しては、工場部分で足りない部分を「金子氏の手直し」という力技で補填している印象。(悪い意味ではなく)

今回私は、工場生産時点でいせ量等が足りないように感じていたので、他のテーラーのようにココからの修正無しで納品された場合には、価格対比で「うーん・・・」といった所だったかもしれません。

たとえば仮縫いを入れることのできるテーラーだと、この状態から改善できるかというと、厳しいでしょう。仮縫いを入れた後の修正も、結局のところCADやマシン縫製で対応することから修正幅には限界があります。

一方、ビスポークマンの場合には、金子氏自身が対応できる範囲で直していくこともあり、より幅をもって修正が可能となっています。

もちろん、ビスポーク(いわゆるフルオーダー)のようにイチから顧客の身体に合わせて型紙を引いているわけではなく、元々用意した型紙から調整するため、こちらも修正範囲には限界がありますが、工場のそれよりは幅を持って対応いただけるでしょう。

また、ジャケットもパンツも納品時に金子氏がアイロンでクセ取りを行うため、しばらくの間は人間の身体の動きに沿った可動を担保してくれます。

着ているうちに段々とアイロンで曲げた部分が戻ってきてしまいますが、クリーニング後であれば、無料で再度プレスをお願いできるそうです。

・・・というわけで、ビスポークマンのメイド・トゥ・メジャーの特徴をまとめると、

  • 英国贔屓にはたまらない本場のシルエットを良心的な価格で実現!
  • 金子氏の技術力を加えることで、構築的ながら快適な着心地!
  • 初心者でも問題はないものの、比較的上級者向け
  • かなと思います。

    どんな人向き?

    ビスポークマンのメイド・トゥ・メジャーは、ビスポークは金額的に厳しいものの、構築的な英国本場のシルエットを、着心地は柔らかに体感したい人にオススメです。

    逆に言うと以前、あなたにゼニアは不要です。本当にいい生地の考察と選択ガイドで触れた「ゼニアこそ至高!!!」なゼニアチンパンや、ボタンホールの色を変えて「この個性こそオーダー!!!」な全く本質的でないミーハー系の方には、向いていません

    これはちょっとフザケ過ぎとしても(笑)、ナポリに代表されるような丸いシルエットが好みの方にも、向かないように思います。

    それぞれ別の良さがあるので、私はナポリ系シルエットも英国系シルエットもどちらもオーダー経験がありますし、好きです。

    今後も、実際に私が袖を通した結果や、仕立てた結果、そして店員と話した経験などを、感覚論に終始せず論理と組み合わせて整理していきますので、少しでも興味を持っていただけたら、是非Feedlyの登録Twitterのフォローnoteの応援を宜しくお願いします!