仮縫いの有無は無関係!もう騙されないパターン/イージー/フルオーダーの分類


明確な定義がないオーダーの種類の分類。曖昧さ故に、お店側の主張だけでいかようにもお化粧できてしまい、顧客側の勘違いが非常に多く起きています。

なんちゃってフルオーダーに踊らされて、多くの方がたいした仕立てでもない高額なスーツを作っていることに課題意識があり、今回整理することにしました。

もちろん、明確な定義があるものではないので、飽くまでメゾフォルテ流とはさせていただきますが、それでも多くのまともなテーラーで実際に会話する中で、築き上げた分類です。

そのため、「フルオーダー」と表現するハードルは高めに設定しており、「イージーオーダー」に当たる範囲を広くとっております。

大きく3種類あると知っておく


それぞれの違いの詳細は後述するので、まずは非常に簡潔にまとめたものだけ。

パターンオーダーとイージーオーダー、フルオーダーの3種類あります。それぞれ身体にどの程度合わせられるか、価格、納期が異なることだけ押さえておきましょう。

明らかな間違い、というか嘘レベルの分類

それでは、いよいよ分類体系の議論です(笑)

あるあるでもあるんですが、「仮縫いの有無がフルオーダーかを決めます」という宣伝文句は、シンプルに嘘です。

ちなみに仮縫いとは、オーダーする顧客の採寸結果に合わせて、一度仮で作った服を着せてみる工程のことを言います。

フルオーダーの工程をざっくり纏めると、

  1. 採寸結果から型紙を引く
  2. 型紙に則って生地を裁断
  3. 生地をアイロンワークで捻じ曲げて標準的な人間の身体の動きに合わせるクセどり
  4. 仮縫いでさらに顧客の身体のクセを把握
  5. 再度修正し、着心地を最高次元まで高めて納品

となるのですが、顧客の身体のクセを実際の服で確認した後、細かく修正する技術があるからこそ、仮縫い工程が非常に重要になるわけです。

たとえばイージーオーダーのように、既定の型紙からの修正幅も限られる状態で仮縫いを行っても、誤解を恐れずに言うとパフォーマンスに過ぎません

フルオーダーの仮縫いのように後工程で作りから再度レベルアップさせるというよりも、仕上がったものの再調整ヵ所の発見作業と言う方が適切かもしれないですね。

たしかに、全く着心地が上がらないかといったら、そんなことはありませんが、フルオーダーのそれとは明らかに次元が違う行いなのは間違いありません。

故に、仮縫い工程自体がフルオーダーの定義を左右するかというと、完全にNOです。

もちろん、「うちはイージーオーダーですが、仮縫いもできますよ」であれば、効果はそこまでないにしても、まだ許せます。ただし、「仮縫いをつけてフルオーダーにできますよ」というテーラーに関しては、ハッキリ言って信用に値しません

仮縫い工程を加えると、だいたい3万程度は取られる上に、それをフルオーダーと信じさせられてしまうので、顧客が不憫で仕方ありません。

次に微妙なライン、型紙作成の有無

ここがまさに微妙なラインに突入するところで、「自分専用の型紙を引いてくれるかどうか」です。正直、私も前までココが区切りだとも思っていました。


パターンオーダー、イージーオーダーについては、ベースとなる型紙があり、フルオーダーにはそれが無く自由。

さらに、パターンオーダーは既定の型紙から基本的に縦幅のみ調整。イージーオーダーはCADにベースとなる型紙をいれておき、縦幅・横幅や体型補正も行うことができる。

・・・え、違うの?と思う方も多いかもしれません。これこそまさに、定義不在のせいで明確に言い切れない部分。

ただし、ちゃんとしたテーラーにこの分類でぶつけると怪訝な顔をされることも少なくありませんでした。

メゾフォルテ流、厳しめ分類

じゃあどういう分類だといいの?というのが以下の図です。

イージーオーダーの範囲を広くとり、フルオーダーの定義をかなり絞りました。

「メゾフォルテ流とか言って、普通じゃねーか!」と感じる方もいるかもしれませんし、逆に「ふざけんな、それじゃうちはフルオーダーじゃなくなるじゃねーか!」という方もいらっしゃるかもしれませんね。

これまでの記述の通り、別に私自身が編み出したというより、ちゃんとしたテーラーの方々と会話していると、この定義がしっくりきそうだなということで設定しています。なので目新しさは当然ないでしょう。

敢えてメゾフォルテ流としたのは、私が当サイトで各テーラーがどのオーダーに当たるかを説明する際には、この分類に基づいて記載するからです。

いかに各テーラーが「うちは仮縫いをやってるからフルオーダーだ」と自社サイト上で謳おうが、CADの型紙を調整し、機械縫製したものを私はフルオーダーとは呼びません。本流の職人の方々に失礼だと思うからです。

では、実際のテーラーとマッピングすると?


イメージしやすいように実際のテーラーとマッピングしたのが上の図。以下、各領域ごとのテーラーの紹介と雑感です。

既定の型紙の縦幅調整のみが基本×マシンメイド

オンリーや麻布テーラー、グローバルスタイル、Sato Tailor、ユニバーサルランゲージ(通常ライン)等があります。

既定の型紙の縦幅調整のみが基本×マシンメイド

ユニバーサルランゲージ(ハンドメイドライン)やゼルビーノ(Napoli Line)があります。

パターンオーダーのため各ブランドの形を大きく変えることはできませんが、ハンドメイド故に縦幅だけでなく、横幅の調整がきく場合もあります。

ユニバーサルランゲージのハンドメイドについては、一部ハンドとはいってもパターンの域を出ないなと感じる部分もありますが、ゼルビーノのナポリラインについてはかなり融通がきくように感じます。

ちなみにゼルビーノのナポリラインについては、ゼルビーノ自体がやっているというわけではなく、Principe D’eleganza(プリンチペ ディエレガンツァ)というイタリアのブランドとの提携です。

が、彼らクセ取りのレベルも異常に高いのが特徴。ちょっと専門的になりますが、ビスポークでないにも関わらず、モヘアのような生地でもキレイに襟を殺し、高い着心地を実現してきます。(相当レベルが高くないと襟の部分がゴワゴワになり、着心地も落ちます)

ベースをCADで縦・横幅調整し型紙作成×マシンメイド

HANABISHIやビッグヴィジョン、SADA、Dittos(ハウススタイルオーダー)、ゼルビーノ(Custom Line/Luxury Line)、ファイブワン、バタク(メイド・トゥ・メジャー)等があります。

非常にレベル差が大きく出るのがこの領域の特徴でして、「イージーオーダーで出来る最高レベルの型紙を目指しているか?」、「副資材は極力柔らかくも質の良いものを選んでいるか?」、「どれだけアイロンワークに工数を割いているか?」がモノを言います。

そして、フルオーダーと主張するテーラーが劇的に増加するのもこの領域です。

フルオーダーの場合、ハンドメイドでないと処理の難しい所もおかまいなしに型紙を作成しますが、そんな型紙は工場のマシンメイドでは対応しきれません。じゃあどうするか?型紙を簡単にするしかないわけです。

さらに、この領域は飽くまでCADに登録された型紙をベースにせねばらなず、顧客の要望に応じてなんでもとうわけにはいきません。(当然、フルオーダーでもお店のこだわりがあり、文字通り何でも請ける、というわけではありませんが)

こうした背景から見ても、この領域は飽くまでイージーオーダーです。

たとえばSADAは自社サイト上で「マシンメイドのフルオーダー」を標榜していますが、当サイトの分類では有無を言わさずイージーオーダーです。

ベースをCADで縦・横幅調整し型紙作成×ハンドメイド

Dittos(ハウススタイルオーダー)、ゼルビーノ(Luxury Line)、ファイブワン、バタク(マスター・オーダー)等がオプションとして提供しています。

よりフルオーダーに近づいているのも関わらず、この領域のテーラーは良識があり、自分たちはイージーオーダーですと明言していることが多いように思います。

まぁDittosやバタク等のようなビスポークテーラーが、セカンドラインとして提供している場合が多いのも背景にあるでしょうね。

イチから型紙を引く×マシンメイド

これ、ほぼ無いんじゃないでしょうか。私が思いつく限りではミケーレ&シン(White Label)ぐらいしかありません。

型紙の自由度は高くなりますが、工程の過半がマシンメイドとなりため、White Labelについては当サイトでは、イージーオーダーとさせていただきました。
※正直、イージーオーダーやパターンオーダーならハンド側に分類しても良い認識なのですが、フルオーダーとの境界だけは厳格にしたく、この分類としました。

が、型紙は本当に自由で、実際にスケッチブックに書き起こし、デザイン性の高いものも含め対応いただけるようです。

ミケーレ&シンのWhite Label以外でこの領域を標榜しているテーラーについては、自社サイトで「型紙を起こしている」と主張しているだけで、実際にはCADからの調整をしているだけのケースが多いように思います。

というのも、かなり明確にモデルが決まっている場合が多く、ヒドい時にはサイズパターン数を明記している場合すらあるからです。

こういったテーラーは、当サイトでは「ベースをCADで縦・横幅調整し型紙作成×マシンメイド」に分類します。

イチから型紙を引く×ハンドメイド

ついにきました。当サイトではココだけをフルオーダーと表現します。

Dittos(ビスポーク)、Lid tailor(ビスポーク)、バタク(ビスポーク)、銀座テーラー、壹番館洋服店、ミケーレ&シン(Full Hand Label)等が該当します。

もちろん、イチから型紙を引いていることと、ハンドメイドであることだけで、技術力の証明にはなりません。

型紙は引いてくれるけど、実は職人の腕がそこまで高いわけではないから、結局型紙がそこまで難しいものではなく、またアイロンワークも簡略化されているため、たいして着心地は良くないという可能性もゼロではないわけです。

もちろん、この領域のテーラーは相当金額もかかりますので、ある程度保証されているところはあります。が、それだけで絶対安心ではないことはご留意ください。

さらに、レベルが非常に高かったとしても、ココまでくるとあとは趣向の違いにもなってくるので、誰かが好きなテーラーでも必ずしも自分が気に入るとは限りません。

分類はしたけれども・・・

さてさて、分類はしましたが、これはフルオーダー至上主義で、それ以外はダメだと言っているわけではありません。

むしろ私自身はイージーオーダーやパターンオーダーで、より良いものを探す方がリアルクローズだと思っていますし、そういうお店を読者の方に共有したい想いで始めたのが「俺評価。 」です。

ネットには、ロクにお店に足も運ばず、試着もせずにランキングを作成していたり、紹介をしていたりする記事が散見されます。あとはステマで褒めちぎる記事もよく見ます。

私自身、オーダー初心者だった頃、こういった記事を見て「結局どこがいいの?」という疑問が解消されませんでした。そして大して着心地のよくないスーツに多くのお金を無駄にしてきました。

メゾフォルテラウンジの読者の方には、そうした無駄なお金を使ってほしくもないですし、服の廃棄の観点からも絶対に避けたいです。

今後も、実際に私が袖を通した結果や、仕立てた結果、そして店員と話した経験などを、感覚論に終始せず論理と組み合わせて整理していきますので、少しでも興味を持っていただけたら、是非Feedlyの登録Twitterのフォローを宜しくお願いします!